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ここクリニック皮フ科アレルギー科

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院長コラム

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  • 2024年2月10日

ニキビに対する漢方薬の効果とはーガイドラインをもとに専門医が解説ー

こんにちは。ここクリニック院長のおかだりかです。
ニキビに対する漢方薬の正しい飲み方を知っていますか。漢方薬は、ツムラやクラシエといったメーカーから販売されており、市販薬として手軽に購入できます。忙しくて病院に行く時間がない人にとっては、手軽に市販薬として購入できる漢方薬は、利用しやすい薬と言えるでしょう。ここでは、ニキビに対して漢方薬は有効なのか、副作用はないのか、などをガイドラインに沿って専門医が解説します。

ニキビに対する漢方薬の効果とは

ニキビに対する漢方薬の効果は、医学的にもある程度は認められており、日本皮膚科学会が作成したガイドラインにも記載があります。 まずは、ガイドラインに記載がある(つまり、医学的に効果がある程度は認められている薬)を一覧で紹介します。

急性炎症期の炎症性皮疹(例:赤く痛いニキビ)

<選択肢の一つとして推奨されている薬>
ツムラ(50)荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
ツムラ(58)清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)
ツムラ(6)十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)

 

<十分な根拠がないので(現時点では)推奨されていない>
ツムラ(15)黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
ツムラ(57)温清飲(うんせんいん)
ツムラ(106)温経湯(うんけいとう)
ツムラ(125)桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

 

面皰(例:白ニキビ)

<選択肢の一つとして推奨されている薬>
ツムラ(50)荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)

<十分な根拠がないので(現時点では)推奨されていない>
ツムラ(15)黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
ツムラ(6) 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
ツムラ(125) 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

 

ここでは、ニキビに対する治療として、主に十味敗毒湯、荊芥連翹湯、 桂枝茯苓丸( 桂枝茯苓丸加薏苡仁)、黄連解毒湯に主に説明していきます。

1)十味敗毒湯

ニキビの治療に、まず最初に使うべきと考えらえている漢方薬です。特に、発症早期のニキビによく使用されます。細菌による感染や炎症が比較的弱いタイプに効果があるとされています。にきび以外にも、蕁麻疹や急性の湿疹にも適応がある薬です。特異な匂いがあり、渋い味です。 特に、クラシエの十味敗毒湯には、「桜皮(おうひ)」が配合されており、ニキビの炎症の中心となる好中球の炎症が局所で持続するのを抑制する効果が示されています。 ニキビだけではなく、アトピー性皮膚炎に伴う毛包炎などにも用いられ、長期に渡り毛包炎を繰り返すような場合、長期に内服することで効果が得られる場合があります。

 

2)荊芥連翹湯

アクネ菌などの菌が感染した赤ニキビや、それが慢性的になった状態の肌に効果があるとされています。慢性的な毛包を中心とした化膿病変に効果的です。この薬は、炎症を伴ったニキビ以外にも、慢性扁桃炎や副鼻腔炎にも用いられます。特異な匂いがあり、苦味をおびている味です。

 

3)桂枝茯苓丸( 桂枝茯苓丸加薏苡仁)

桂枝茯苓丸加薏苡仁は、桂枝茯苓丸にハトムギを加えたものです。 月経不順にも適応がある薬であり、月経周期に伴い増悪するニキビによく使用され、有効性の報告もあります。特異な匂いがあり、わずかな甘みと苦味があります。皮膚の乾燥やニキビ、シミ、そばかすなどがある場合にも、使われることがあります。

 

4)黄連解毒湯

黄連解毒湯は,主薬の黄連(おうれん)に4つの生薬を加えたものです。黄連の主成分であるベルベリンには抗菌作用があることが知られています。ニキビの炎症の原因であるアクネ菌にも有効であると言われています。しかし、抗生剤に比べると即効性に劣りますので、抗生剤で治療した後に、再燃を予防する目的や、副作用で抗生剤が内服できない場合などに使用されることが多いです。

 

まとめますと、
第一選択として広く使われるのが、十味敗毒湯
炎症や化膿を伴った赤ニキビには、荊芥連翹湯、黄連解毒湯
月経周期に伴い増悪するニキビには、 桂枝茯苓丸加薏苡仁
となります。

 

一般的に、漢方薬は即効性が低く、個人によって効果が異なります。市販薬を購入しようと考えている人は、このことをよく理解しておきましょう。

 

参考
日本皮膚科学会 尋常性痤瘡治療ガイドライン 2016

漢方薬の副作用

多くの漢方薬には、甘草(かんぞう)というエキスが含まれており、そのエキスによる偽アルドステロン症という副作用が生じることがあります。偽アルドステロン症を発症すると、高血圧になり、血液中のカリウムの値が低くなります。甘草(かんぞう)に含まれるグリチルリチンという物質が、偽アルドステロン症の原因と考えられています。

医療用漢方製剤148品目のなかで,7割以上は甘草を含んでいます。含まれている甘草の1日量は1.0~8.0g程度です。特に、甘草の量が2.5g(グリチルリチン酸 100mg)を超える製剤については,低カリウム血症を発現しやすくなるので注意が必要です。1日量として甘草を2.5 g以上含有する製剤は,もともと血液中のカリウム値が低い方は飲むことはできません。甘草が含まれている漢方薬を服用する量、服用期間、年齢(60歳以上)が偽アルドステロン症の発症のリスク因子とされています。

ニキビの治療に用いられる漢方薬に含まれる甘草は、以下の量になっています。ニキビの治療は、比較的若い方が多いですが、治療期間が長期にわたることもありますので、偽アルドステロン症という副作用には注意が必要でしょう。

<ニキビ治療に用いられる漢方薬に含まれる甘草(かんぞう)の量(1日量)>

ツムラ(50)荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)1.0g
ツムラ(58)清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)1.0g
ツムラ(6)十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう) 1.0g
ツムラ(15)黄連解毒湯(おうれんげどくとう)0 g
ツムラ(125) 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)0 g

漢方薬で改善が乏しい場合は

日本皮膚科学会が作成したニキビのガイドラインでは、ニキビ治療に対する漢方薬の位置づけとして、「他の治療が無効、あるいは他の治療が実施できない状況では、一つの選択肢として推奨する」といったものです。つまり、まずは通常の治療を行い、難治な場合や副作用などで続けられない場合に選択すべきである、といった位置づけになります。

実際の臨床現場では、漢方薬は患者さんによって効果は様々である、といった印象です。とても有効な方もいれば、そうでない方もいます。また、即効性は乏しく、毎日しっかり内服を継続することで、効果が得られることが多いため、患者さんにしっかり飲んでもらうことも大切なのです。よって、ニキビの最初の治療として漢方薬を用いるというよりは、まずは一般的な治療を行い、その後に考慮される治療方法であると考えます。

まとめ

ここでは、ニキビ治療に用いられる漢方薬について説明しました。ニキビには、効果がある程度認められている漢方薬が数種類あります。しかし、いずれも一般的な治療で効果が得られない時や、副作用で続けられない場合に推奨されています。また、漢方薬は安全で副作用がない、と考えている人もいるかもしれませんが、多量に長期間飲むと、副作用が生じる可能性があります。ニキビに悩んでいる方は、漢方薬も治療の選択肢の一つです、かかりつけ医と相談して、適切に使用しましょう。

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