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院長コラム

Column

  • 2020年5月21日

アトピー性皮膚炎の治療について
ー重症な方への最新の注射製剤「デュピクセント」も解説ー

こんにちは。ここクリニック院長のおかだりかです。
アトピー性皮膚炎は、繰り返す湿疹やかゆみを伴う疾患であり、小さいお子さんから大人まで多くの方が悩んでいる皮膚の病気の一つです。残念ながら完治するような特効薬はありませんが、毎日のスキンケアや塗り薬、飲み薬など適切な加療をすれば、通常通りの生活ができる場合が多いです。ここでは、アトピー性皮膚炎の治療について日本皮膚科学会が策定している「アトピー性皮膚炎のガイドライン」に沿って、わかりやすく説明していきます。また、2018年から使用可能になった、注射製剤「デュピクセント」も含めて解説します。

アトピー性皮膚炎の正しい治療ーガイドラインに沿って説明ー

アトピー性皮膚炎は、よくある皮膚の病気の一つですが、完治しにくいのため、悩まれている方の多いでしょう。そのため、サプリメント、食事療法などの民間療法がたくさんあり、中には有効性が確かでない治療法もあります。治療の基本である「ステロイド」については、過度に副作用を心配し、使用を自己中断してしまう患者さんもいます。日本皮膚科学会は、2000年に初めて「アトピー性皮膚炎の診療ガイドライン」を策定し、2018年には改訂版が出されています。

治療の基本は、外用剤ー保湿剤とステロイド剤ー

アトピー性皮膚炎の治療の基本は、ステロイドを中心とした塗り薬です。アトピー性皮膚炎の治療で使用する主な塗り薬は、「保湿剤」と「ステロイド剤」です。アトピー性皮膚炎の方は、皮膚が乾燥しやすい傾向にあるので、症状が安定している時も保湿剤の外用を続けることは重要です。保湿剤は、病院で処方されるもの以外に、市販でも販売されています。肌に優しい保湿剤を選ぶようにすれば、病院で処方される医療用医薬品としての保湿剤を必ずしも使う必要はないでしょう。入浴後、あまり時間をおかずに(5分以内がよいとされています)全身にしっかり塗ると効果的です。乾燥を予防するためには、保湿剤を塗るだけではなく、入浴時に洗いすぎないようにすること(ごしごし洗いや、石鹸の使い過ぎに注意)も大切です。乾燥肌の方は、綿のタオルか手で泡を使って洗うようにしましょう。

 

しかし、湿疹が出ている部位は、保湿剤だけでは治まらないことが多く、ステロイドの塗り薬が必要になります。ステロイドは間違った使い方や、漫然と長期に使用することで、副作用が生じる場合があります。塗っている皮膚が薄くなったり、毛が濃くなる、毛細血管が拡張して赤くなる、など多彩な副作用があります。しかし、正しく使用すれば、副作用は最小限に抑えられます。これらの副作用は、顔や陰部など皮膚の薄い部位に多く出現します。特に顔に副作用がでると、整容的に問題になります。ステロイドと同様の効果があるが、副作用が出にくい薬が、プロトピックという免疫抑制剤の塗り薬です。プロトピックは、タクロリムスという免疫抑制剤を塗り薬にしたものです。アトピー性皮膚炎の患者さんは、長期間ステロイドを塗り続けなければならないため、顔など副作用がでやすい部位には、より副作用の少ないプロトピック軟膏へ切り替え、継続的に治療を行っていきます。

治療の基本は、外用剤ー保湿剤とステロイド剤ー

湿疹が治った後、すぐにステロイドの使用をやめてしまうと、数日でぶり返すことをよく経験します。よく繰 り返す皮疹に対しては、一旦皮疹がよくなった後に、保湿剤によるスキンケアに加え、ステロイドやプロトピック軟膏を定期的に(週 2 回など)塗ることで、良い状態を維持しようとする治療法があります。これをプロアクティブ(proactive)療法といい、推奨されている治療方法です。皮膚症状の安定には、日々のケアがとても重要です。仕事や学校で疲れて帰ってきた後に、薬を塗るのが大変なことも多いと思いますが、頑張って続けることがポイントです。

飲み薬による治療ー抗アレルギー剤と免疫抑制剤(シクロスポリン)

アレルギー症状を抑える「抗アレルギー剤」は、アトピー性皮膚炎の治療によく使われています。ステロイドや保湿剤といった塗り薬と併用することで、かゆみを抑える効果があります。抗アレルギー剤は、塗り薬による治療の補助的な役割という位置づけであり、抗アレルギー剤だけの治療は推奨されていません。飲み薬には、「シクロスポリン」という免疫抑制剤も使用されます。重症なアトピー性皮膚炎の患者さん(強い炎症所見を伴う皮疹が体表面積の 30%以上に及ぶ)に限定して、2008年から使用ができるようになりました。服用後から速やかにかゆみが減少することが特徴です。長期間服用すると、腎障害や高血圧などの副作用が出現するため、服用期間を限定して使用することが推奨されています。症状が軽快した後は抗アレルギー剤とステロイド塗り薬などの通常の治療に切り替えることが大切です。

<紫外線療法>

紫外線療法とは、特定の波長の紫外線を皮疹にあてる治療方法をいいます。ステロイドや保湿剤の外用、抗ヒスタミン薬内服などの一般的な治療で軽快しない方に適応される治療になります。乾癬という皮膚の疾患の治療でよく使用されていました。アトピー性皮膚炎の方でも効果があることがわかり、保険診療で施行できます。1回の治療でも、一定の効果はありますが、しっかりとした効果を得るためには、症状に併せて、定期的に通院する必要があります。また光線療法を受けている間も、通常の治療(スキンケア、外用、内服)は必要になります。紫外線をあてる治療なので、長期間継続することによる発がん性が指摘されています。無制限にできる治療ではないことを知っておきましょう。

最新の注射製剤「デュピクセント」

2018年4月から使用できるようになった、注射製剤です。上腕などに皮下注射する薬です。アトピー性皮膚炎の炎症の中心的な物質をターゲットにした薬です。具体的には、アトピー性皮膚炎の炎症には、サイトカインというたんぱく質が関連しており、デュピクセントは特定のサイトカインの受容体(IL-4受容体αサブユニット)をブロックすることで、炎症を抑える効果を発揮します。18歳以上の重症のアトピー性皮膚炎患者さんを対象に行われた臨床試験で、16週間の投与で有効性が確かめられています。これまで、重症のアトピー性皮膚炎の患者さんでは、上記で説明したシクロスポリンという免疫抑制剤の内服や光線療法しか選択肢がなく、いずれも長期の治療方法としては、適さないものでした。デュピクセントは、これまでの薬とは作用機序が異なる新しい薬です。副作用が出現する可能性はありますが、これまでの治療に比べると軽度のものです。
副作用としては、注射部位反応(皮下注射した部位が、赤くなるなど)、アレルギー性結膜炎などがあります。

デュピクセント

デュピクセント治療の実際

デュピクセントは、300mgで1本の注射です。初回は、2本皮下注を行い、その後は2週おきに1本ずつ注射していきます。2週間ごとの来院が難しく、家族、ご本人にしっかり指導させて頂き、ご理解が得られる場合は、在宅自己注射も可能です。

<実際の治療の経過>

まとめ

重症なアトピー性皮膚炎の方の中には、毎日にしっかりスキンケアや治療を行っても、なかなかよくならない方もいます。ガイドラインにも記載がある、治療の最終目標(ゴール)「症状がないか,あっても軽微で,日常生活に支障がなく,薬物療法もあまり必要としない状態に到達し,それを維持することである」に至らない方もいます。2018年4月からは、重症なアトピー性皮膚炎の患者さんに、新しい注射製剤である「デュピクセント」が登場しました。お困りの方は、お気軽に相談してください。

参考
アトピー性皮膚炎ガイドライン2018年

 

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